サロベツの大地とあなたを結ぶ

3月29日に幌延町で北海道主催の浜里風力発電事業の公聴会(住民が意見を言う場)が開催されました。
NHKニュース

9名のうちサロベツエコネットワークを含めて7名が事業に対して反対意見を述べました。
意見は、この事業地はサロベツの国立公園に隣接しており、夕日や湿原、利尻富士の風景の風景が素晴らしいサロベツの景観を破壊し、希少な鳥類をはじめとした野生生物にも影響が大きく懸念されるというものでした。

サロベツエコネットワークの公述原稿はこちらです。

他の方のお話の中で特に印象に残ったのが、幌延町のパンケ沼の近くに住む稲垣順子さんのお話でした。

地元の方の心に浸みるお話でしたので、ここで紹介させていただきます。

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先日、風車建設の説明会を聞き、パンケ沼から風車が見えることを知り愕然としました。
私はサロベツ原野パンケ沼近くに住んで35年程経ちます。この場をお借りし、地域住民としてパンケ沼の景観・風景の価値をお話しさせていただきます。

パンケ沼の景観美
サロベツ国立公園の中には大小200余りの湖沼があります。その中で下サロベツにあるパンケ沼は一番大きく国立公園のシンボルとも言えます。沼の畔からは人工物が何もない湿原・原野・砂丘林・利尻山が見える景観が広がっています。日本離れした風景とよく言われます。特に夕陽が有名な場所であり、それを目的に道内外から多くの人々が訪れます。時期になると渡り鳥が見られ夕日の中を飛ぶ雁を季語に俳句を詠む句会もあります。夏の夜はホタルが舞う年もあり、また、湖面に映る星空も見事です。
では、そのような美しい景観の背景にある価値というものを3つの視点に分けお話しします。

1つめは歴史的・教育的視点
パンケ沼周辺の景観は長い時間の中で独特の自然条件や気候風土などが反映し、少しずつ変化しながら個性ある風景に成長し味わい深いものになっています。
沼に見え隠れする泥炭層からは3000年前の太古の姿を想像します。沼向こうの砂丘林には戦後すぐに、そこで生活をしていた人々がいました。人々はサロベツ川にかけた手作りの吊橋を渡り、沼の縁を歩き下沼地区まで買い出しに来ていました。沼の周辺には笹ではなく蟻塚がたくさんあったといいます。冬は凍った沼の上を歩いてきたといいます。40年ほど前には地域の若者たちが沼で泳ぎ、あそび、そして周辺の掃除を自分たちでしていました。近年は国立公園パークボランティアで外来種除去作業をし続けていたり、また、私個人の活動では地域の子ども達に自然遊びや探検、環境教育を定期的に20年近く行っています。子ども達は我が町に国立公園があることやラムサール条約登録地として国際条約が結ばれていることを誇りに思うようになりました。また、同じラムサール登録地の子ども達との交流を持つこともあります。子ども達は人工物が何もないこのパンケ沼の景色の中で様々なことに気づきを得、学びを深めています。渡り鳥の観察を例に挙げると遠い外国からやって来る鳥たちを待つようになり、無事に着くだろうかと地球規模での気候の変化に思いを馳せています。
このようにパンケ沼の風景は長い間、地域住民の暮らしの中にあり、多くの人々が様々な形でその風景に関わり続けています。

2つめは福祉的視点
ストレス社会と言われている近年、環境と福祉を統合する研究が各国でなされています。
森林療法や園芸療法、環境療法など、ご存じの方もいらっしゃると思います。それらに共通する大事なことは心が休まる空間、自然の循環や時間の経過が感じられ五感を刺激すること、だと言います。パンケ沼園地を利用した人々と話をすると 「癒される」「リセットされる」「内省できる」「自然と対話できる」「明日からまた歩める」といった言葉を何千回聞いたか知れません。つまりそこにはケアに必要な条件が備わっているのです。つい先日も凍っているパンケ沼に沈む夕日の風景写真をSNSにアップしたところ 「変わらない景色に癒されました」 「元気が出ました」 とのコメントがすぐに入りました。そして 「人工物が何もない唯一無二のこの景色はこのまま残してほしい」 とありました。 実際、私も今まで、この風景に生きようとするエネルギーをどれだけもらっているかわかりません。

3つめは経済価値からの視点
世界中、どこでもそうですが素晴らしい景色、個性的な風景は観光資源になります。今までもたくさんの人々がパンケ沼の艀に佇み、木道を歩いています。ひとつ例を挙げると、ここ数年、とある旅行会社が秋にプロのカメラマンを同行しカメラ講座ツアーをパンケ沼でしています。「電線や鉄塔など人工物が何もない沼の景色が魅力」 「ここにしかない景色」 なのだそうです。ツアー客は本州の方ばかりで中には奄美大島からの参加もあるそうです。ツアー客は幌延の町で買い物をしていきます。経済効果が無いわけではないのです。
私の体験からですが、以前、小型の船で天塩川からサロベツ川に入りパンケ沼近くまで来たことがあります。川から見る景色は空がどこまでも広く、両岸にはシジミが見え隠れし、野鳥の鳴き声をシャワーのように浴びました。本当に心に残る風景と体験でした。こうした体験は小型船でなくともできます。パンケ沼とサロベツ川をカヌーやカヤックで移動する素晴らしい体験ツアーができます。
単に景観の美しさだけではなく、今まで述べた 歴史的・教育的、福祉的価値を持ち合わせながら観光交流人口をさらに拡大できる可能性が大きいと思えます。

以上、3点からの視点で景観価値を述べましたが、何より、人工物が何もないこの景観は地域特有のものであり、価値ある風景として町の宝であります。 保存すべき風景だと感じています。 
だからこそ、この風車建設にあたってはこの風景に関わっている人々や地域住民を置いてけぼりにするのではなく、参加と合意のプロセスを丁寧にすることが必要なのだと思います。

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以上です。

音類風車風車がある風景は観光になると言われていますが、サロベツに風車が立つと至る所にこのような風景が現れます。果たして、何もない風景が売りのサロベツに風車が本当に観光資源になるのでしょうか?

浜里の風力発電事業について、詳しくは以下のページをご覧ください。

風車によりサロベツの野生生物と景観が失われようとしています

浜里の事業についてオンラインの署名活動を以下のリンクで行っていますので、ご署名をよろしくお願いします。コメントも歓迎いたします。
サロベツ(国立公園)の貴重な野生生物と景観を守ろう