2019年10月13日にサロベツ湿原センターで
『草原のタカ、チュウヒとは―サロベツのチュウヒを知ろう―』
のチュウヒ発表会が開催されました。
まずはこの会の主催者である環境省稚内自然保護官事務所首席自然保護官の有山義昭氏より種の保存法の国内種に指定されたチュウヒの保全の考え方についての説明がありました。
それから3名の講師よりチュウヒに関する講演がありました。
まずはサロベツの動物写真家である富士元寿彦氏よりサロベツのチュウヒの生態の写真の紹介がありました。どれも迫力ある貴重な写真ばかりでしたが、この日は幸い天気がよかったので、館内を暗くできず、スクリーンに写真がきれいに映らなかったのが残念です。
先日の浜頓別町で開催されたチュウヒ勉強会で登場したチュウヒのぬいぐるみの持ち主の方が、この報告会にも参加してくださり、はるばるこの大きなぬいぐるみを持って札幌から来てくださいました。実物大のぬいぐるみを見ることで、チュウヒの大きさを想像することができ、参加者の方は参考になったかと思います。今後の湿原センターの展示にぜひ使いたいです。
次に日本野鳥の会三重の代表の平井正志氏より三重県や他の本州のチュウヒの繁殖状況についての説明がありました。本州のチュウヒの繁殖数は減少傾向にあり、チュウヒの繁殖地を移設する取り組みはあまりうまくいっていないようでした。
最後に私がサロベツ周辺のチュウヒの繁殖状況と保全上の課題について説明しました。環境省や日本野鳥の会が行った調査によると、発見されたチュウヒの巣のうち国立公園内にあるものは1/3程度でした。餌場となる牧草地に隣接する場所でも繁殖するため、今後チュウヒの保全を行うとためには、農業開発などとうまく折り合いをつけることが重要です。
有山氏をコーディネーターに3人の講演者と対談を行いました。まずは参加者にあらかじめ配っていた質問票から講演者に対する質問がありました。今回はチュウヒの生態に詳しい方が多く参加していましたので、その中の一人である先崎啓究さんにもチュウヒの形態についての質問に答えていただきました。
対談では、参加者にあらかじめ配布していたチュウヒの保全に関する考え方についての記載事項を元に、主にチュウヒと農業を共存させるにはどうしたらよいかということが話し合われました。チュウヒを保全することが農家にとっても利益となるような仕組みを作ることが重要ということで、話はまとまりました。
今回のチュウヒの報告会用に、札幌にあるEFP(エデュエンス・フィールド・プロダクション)の米川洋さんが、チュウヒの生態や研究成果を表すDVDを無償で20部提供していただきました。DVDはすべて配布し、報告会が始まる前に、ほとんどなくなってしまうほどの人気でした。
当初この報告会は、チュウヒという鳥を知ってもらい、調査結果の報告や他の地域での繁殖状況の紹介という位置づけだったのですが、調査を行ううちに、国立公園などの鳥獣保護区の外側に巣が多いことがわかり、農地に近い巣では開発事業による繁殖にかなりの影響を受けている可能性が高いことがわかりました。今回は、一般の方、鳥類関係者だけでなく、行政関係者やコンサルの方など多様な方に参加していただいたため、今後につながる実りのある議論ができたと思います。今後も、このような場を設け、情報交換の場にすることができれば大変嬉しく思います。
長谷部